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「浮きこぼれ」たちの能力を社会で享受し支援するために~幸田直樹さんインタビュー2回目の②

「高IQ者認定支援機構」をソフトバンクの元副社長などすごいメンバーとともに設立した幸田さん。

「機構設立の目的と使命」にはこうあります。

「特別な適性を持つ人材」を発掘し、これらの人材が社会で活躍する道筋をつくることを目的として一般財団法人高IQ者認定支援機構を2019年4月1日に設立しました。

この目的の達成のため、以下の事業を行うことを定款に定めています。
 (1) 特別な適性を持つ人材の発掘及び育成(IQ検査〔CAMS〕による認定)
 (2) 企業・研究機関等における特別な適正を持つ人材の活用推進
 (3) これらを達成するための社会環境の整備
 (4) その他この法人の目的を達成するために必要な事業

これらについて具体的に掘り下げて、かつわかりやすく理解するために幸田さんにインタビューを行いました。(インタビューは2019年10月中旬)



※「浮きこぼれ」ってなに? 高IQの人が生きづらいってどういうこと? というのを私なりに書いてみた①はこちら↓↓
bookand.hateblo.jp



***


──幸田さんにこうしてインタビューするのは二回目ですが、今回は「一般財団法人高IQ者認定支援機構」について教えてください。
機構の設立のきっかけや目的を教えてください。

幸田:私が縁あってソフトバンクモバイル(現ソフトバンク)の元副社長だった松本徹三さんとお会いした時に「こういうことをやりたいのですが」とお話ししたところ、「自分も常日頃からそういうものが必要だと考えていた」と共鳴して頂きました。

私財を拠出してくださり財団を創設、無報酬の代表理事になっていただくところから始まりました。

目的は色々ありますが、大きくは「高IQ者の待遇改善」「国家間競争力の向上」です。
そのために「高IQ者の認定」並びに「支援し役立てる環境を整える」ということをやっていきます。



──素晴らしいご縁でしたね! 幸田さんの熱量が伝わったのでしょうね。
機構はどんな人で構成されているのですか。 普段どんなことをされている方々なのでしょうか。

幸田:機構は、理事会、評議会、事務局から構成されています。
設立当初より松本代表理事が各分野の有力者の方々に接触してくださったことで、客観的に見ても質の高い理事会と評議員会になったと思います。
構成員は
https://www.hiqa.or.jp/officer
をご参照ください。

それぞれ活躍の場も広く、普段はそれぞれのお仕事をなさっております。一方、理事がその専門性を活かし、つきっきりで作業をすることもあります。
また、事務方はHPの管理や文書作成等の業務を日々こなしております。



──幸田さんはどんなことをなさっているのですか?

幸田:「検査の実施と認定関連の事務」は私と事務局長が中心となってやっておりますが、専門性の高い理事の方々からの手厚いご指導とご助力も頂いています。
「高IQ者を具体的にどう支援していくか」については、興味を持って頂いた各企業との連携関係の構築を含め、松本代表理事が理事や評議員の皆様と相談しながら進めております。



──みなさんかなりエネルギッシュであると、小耳にはさんだのですが…

幸田:年齢は関係ないかもしれませんが、松本代表理事は79歳とご高齢であるにもかかわらず、尋常ではない行動力、指揮力でぐいぐい機構を引っ張って行ってくださいます。そのエネルギーがどこから湧いてくるのか、私は日々探っているのですが未だ謎です。今でも世界中を飛び回って仕事をされているんですよ。



──そうなんですね……。国や世界を引っ張るような企業のトップはやはりそれだけのエネルギーや行動力やアイデアに満ちているんですね。想像もつかない世界です。
さて、最近、機構に対して有識者から続々と応援メッセージが来ているようですね。具体的にどんな方々からどんなメッセージをいただいたのでしょう。 そしてそれに対する感想や手ごたえは?

幸田:元Google米国本社の副社長(日本法人の社長、名誉会長)、株式会社ドワンゴ代表取締役社長(カドカワの取締役)、サイバー大学の学長兼代表取締役、公益財団法人 孫正義育英財団の事務局長、Gftd Works株式会社の共同代表取締役社長、等々から、 応援メッセージや将来の業務提携に関する期待の表明を頂きました。
これは当機構が一つ一つ着実に「本物」を提供しようと努力していることが伝わったからだと思います。
ご期待に応えられるよう全力を尽くしたいと考えています。



──では次に、機構が実施するIQテスト「CAMS(キャムズ)」について教えてください。
IQテストにも色々な種類がありますが、これはどのようなものなのでしょう。

幸田:一言で申し上げますと、CAMSは高域の知能の一部を測定するための知能検査です。
前川教授のお言葉を拝借しますと 図形の行列推理問題を用いて、時間的な圧力の少ない状況で高い推論能力を発揮する力、すなわち、少ない情報から隠された法則性を見つけ出す能力を測定することを目的としています。
知能の定義は現在では多様化していますが、CAMSは単に知識の量や記憶力に限らない、より高次の認知能力を測定する心理検査を目指しています。



──IQの測定範囲は?

幸田:IQの測定範囲は問題の入れ替えがあるため、一定ではありませんが、概ねIQ115sd15-IQ180sd15の間を想定しています。
事前に取得したデータを統計分析した結果からも想定に近い測定範囲が得られております。
https://www.hiqa.or.jp/post/camsの尺度構成について



──180までってえぐい数字ですね(笑)
WAISの場合は動作性・言語性がありますが、これは行列推理問題ということで動作性を測るんでしょうか。

幸田:WAISはガイドラインに割かれている分量からも分かるように発達障害の検知に大変優れた知能検査です。
狭い範囲で高度な能力を測定するというより、多角的に様々な能力を測定することに重きを置いていると考えられます。

WAISは作成当初、言語理解、抽象的推理、知覚統合、量的推理、記憶、処理速度を重視した下位検査から構成されました。その後、それらを大きくまとめて言語性検査と動作性検査に分けました。
WAIS-4以降は、この分け方が適当でないと考えられたため採用されていません。
ということもあり、動作性という言葉の使用はここでは避けますね。

一方、CAMSは発想が逆で、行列推理に注目し、狭い範囲の能力を高いレベルで測定する設計となっております。



──わかりやすくありがとうございます。
ちなみに復習(?)です。SD15でIQ180というのは何人に1人の出現率ですか?

幸田:IQ180sd15はおよそ2,000万人に1人の出現率です。



──現在、日本人の15歳以上の人口が約1億1100万人だそうです。
単純計算で日本人で5~6人……恐ろしいですね(笑)
この問題を作るのにどのくらいの期間を要しましたか?

幸田:作成期間は約1年間と少しです。問題の検証やデザインの微修正に大変時間がかかりました。



──私は本テスト開始前にプレテストを受けましたが、鬼でした。。。
信頼性はどの程度なのでしょう。お聞きしなくても、たぶんものすごく精密に検証していると思うのですが。

幸田:統計分析データの基となる事前データの取得にご協力いただきましたね。
信頼性につきましては前川教授(東京工業大学名誉教授)の統計分析として詳しく掲載しております。
詳しくはこちらをご覧ください。
https://www.hiqa.or.jp/post/camsの尺度構成について

知能検査として十分な信頼性を持った検査だと証明されております。



──信じます!
ではこのテストは一般的には、いつ、どこで、どうやって受けられるのでしょうか。

幸田:会場で実施するCAMSは、しばらくは東京で定期的に開催する予定です。その後、全国で受検できるようにしていく予定です。

能力を詳しく検査するため、検査時間だけで3時間と大変長い検査となっております。
詳細につきましては「一般財団法人 高IQ者認定支援機構」のこちらのページをご覧ください。
https://www.hiqa.or.jp/cam-s



──ちなみに「Web簡易検査」は何を目的として、何がわかるのでしょうか。

幸田:行列推理というものを初めて目にする方もいるかもしれません。そういった方に少し慣れていただく意味があります。
また、ネット上で簡便に受検できる検査は統計を取っていないものが多いように思います。簡便に受けられて、統計的な背景をもつ検査の提供を目的としています。

これは一般的な行列推理で分かることについてですが、空間把握能力や視覚的な認知に関する能力が分かると言われています。
簡易版はあくまで「簡易」です。数値は参考程度と認識してください。



──なるほど、よくわかりました!
では次に、「高IQ者」について教えてください。 幸田さんから見て高IQ者で「もったいない」と思う生き方の人は多いですか? 才能を活かしきれていないというか。

幸田:時々いらっしゃいます。高い知的能力を持ちながらも、コミュニケーション能力が低い場合などは、望まない仕事について生計を立てたりされています。
そういった方を見ると「社会としてもったいないのではないか?」と感じます。



──「落ちこぼれ」の反対、能力が高すぎて社会や組織からはみ出てしまう「浮きこぼれ」も存在する?

幸田:これに関しては沢山いるように思います。全体的にバランスよく能力が高い場合は尊敬されたりもしますが、突出して高い能力を持つ代わりに低い部分もあるという場合が少なくないと思います。
画一的な教育を実施している以上、そういった方々が浮きこぼれてしまうのではないかと思います。



──私も保育園、小学校、中学校の時、やれと言われた課題や作業がどうしても早いのです。賢い人はそこをわざとゆっくりに合わせるんでしょうけれどその知恵というか配慮ができなかった。そこで先生に「早すぎる」とか嫌味を言われてきたことを思い出しました…。思い出せば出すほど実に嫌な思い出です。

幸田:そうなんですね。私も同じ経験があります。



──さて、高IQ者に向いている仕事にはどんなものがあると思われますか?

幸田:高IQ者に向いている仕事は、もちろん知的労働です。
行列推理で高いIQを記録する人たちは、AI開発関連やサイバーセキュリティ関連だと力を発揮しやすいとよく聞きますね。実際、高IQ団体では優秀なプログラマーの比率が異常に高いです。



──なるほど! 超個人的にはITやプログラミングはかなり縁遠いので(笑)、建築関係とか、文章を書くとかも(どんどん遠くなる!)関係あるといいな…笑
将来的にはどんな仕事が紹介される予定または予測していますか。

幸田:どのようなことと関係性があるかを知るためにはまずはデータが必要です。それらを明らかにするという遠大な目標の第一歩を踏み出したとも言えます。
紹介することについてですが、仕事だけにとどまらず様々な支援をしていきたいと考えております。まだ第一回検査も実施されておらず、整備段階ですのでこれからということになります。

一方、前述のとおり協力表明をしていただいている企業や財団もありますし、また理事の関係などからも色々と模索していく所存です。
高IQ者が力を発揮しやすい環境を整え、良い条件で働けるよう支援していきたいと考えています。
(※インタビュー時は第一回検査は実施されていませんでしたが、10/27に無事実施されました。)



──なるほど。一般企業もこの機構を通じて人材をマッチングしてもらえるようになる将来を想像してもいいですか? そして「様々な支援」というのがとても楽しみです!

幸田:当然それを狙っていますが、具体的にどうやるかはこれからの課題です。まずは高IQ者のデータベースを作り、時間をかけてじっくりと各企業の理解を得ていきたいと思っています。
さまざまな支援のアイディアがあれば是非お教えくださいませ!



──当ブログは子どもがテーマなのでそれに関して一つ教えてください。 今後、子どもの浮きこぼれに対してのテストや、教育などの支援などは考えていますか?

幸田:子どもは可能性の宝庫です。知能も日々変化していますので正確な測定は容易ではありません。
測定目的が発達障害等であればある程度判別できるようになってきているようですが、「将来、高度な能力持つようになるか?」ということを子どもの内から測定することはなかなか難しいように感じます。
しかし何もかも日々進化していきますので、完全に不可能ではなく、いつか可能になる日が来るかも知れません。



──最後に言っておきたいこと、メッセージなどありませんか?

幸田:当機構は設立後間もない組織であり、我々が実現しようとしている「高IQ者の認定と支援」という事業は、世界的にも前例がございません。従って、率直に申し上げると、全てが未だに暗中模索の状態であることは否めません。
しかしながら、我々としては、不断の努力で何とか皆様のお役に立てるよう全力を尽くしていく所存ですので、何卒倍旧のご助力を賜りますようお願い申し上げます。



──ありがとうございました! 今後に期待しています!


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毎度おなじみ幸田さんの絵コーナー。幸田さんお気に入りの絵、うさぎBRAIN!!


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こちらは長電話の間にするするっと描いたそうですよ。IQ高い人が細かい線画を描いているのはよく見ます。なんだろう。


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これは…豚か猪か


***


……いかがでしたか。
私はお話を聞きながら「難しい! なにやら難しい!」という圧倒感と、わくわくが混ざった気持ちになりました。

日本でまだやられていないことを始めるということで、試行錯誤の日々だと思います。
どんなことにも「初めて」「先駆者」が存在するわけです。
最近保育士試験を受けましたが、色んな幼児教育・保育の歴史も勉強しました。
「初めてやってみた」という先人たちの試行錯誤・失敗や成功の歴史を経て、今に繋がっているのだとしみじみ感じます。

とにかく今は、幸田さんたちが何かを始めてくださったということに感謝し、わくわくし、本当に初めてのことなので紆余曲折もあるかなとは思いますが、応援していきたいと思います。

ちなみに私のプレテストの結果は……500人に1人くらいの出現率のIQ値でした(天才というにはちょっと遠い…w)。
今後何かわくわくする出会いがあるといいなあと、期待に胸を膨らませております!