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「浮きこぼれ」たちの能力を社会で享受し支援するために~幸田直樹さんインタビュー2回目の①

2019年8月28日(水)のNHKクローズアップ現代+」で「知られざる天才 “ギフテッド”の素顔」が放映されました。
www.nhk.or.jp

とりあえず一読していただけるとこれから話すことがよくわかると思います。

私も自宅で、MENSAのお友達数人と一緒に、あれこれ言いながら真面目に見ました。
「周りに合わせてゆっくり、レベルを下げてやるのは当然のようにやっていた」
「とりあえず社会が変わってくれないと学校からは変われないよね」
などと色々意見が出ました。

「知られざる」というタイトルですが、社会は知ろうとしてくれなかったと思うのです。
「多様性」ということで身体障碍者、知的障碍者などに対する支援、そして発達障害は広く認知されるようになって、幼少期からの支援体制が充実してきましたが、
「できない」に対する少数派ではなく、「できすぎる」に対する少数派のことを日本はいままで潰しにかかっていました。
少なくとも幼児~中学生くらいまでは。

「能力の高い人を潰す? そんなバカなことする大人がいるの?」とお思いの方もいるかもしれませんが、いっぱいいます!
まず親。理解のない親、潜在意識でそういう子どもに恐怖を感じる親は潰しにかかってきます。
そして学校の先生。

番組内でMENSA会員から寄せられたアンケートの紹介をしていましたが、私のも出ましたよ。しょっぱなに。

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クロ現で採用された、私の回答


NHKからの「高IQであるが故に、義務教育の授業内容や形式について違和感を感じたり、学習意欲が湧かなくなった経験がありますか?」
という質問に対する私のメールでの回答は

・義務教育の前、保育園の時から感じていました。年長のときに保育園のクラス全員で静かにひらがなのペーパーをやっている時、みんなが一生懸命練習しているのですが私はもう書けるので「はじめて」と言われてすぐ終わってすぐに先生に提出に行くのです。すると先生が不機嫌になり、とても怖かったです。

・小学校に上がっても似たような状況でした。教科書なんて自分で一度読めばわかる。なのになんで先生はこんなに簡単なことを長時間説明しているのだろうと思っていました。でもそうしないとわからない子がいることも理解しています。しかし退屈で仕方ありません。小学校中学校の間は授業中にずっと隠しながら絵を描いて過ごしていました。

・中学校に入っても、教科書を読んで授業を一回聞けば内容を理解し全部覚えるので、「家庭学習(授業の復習)」という宿題の意味がわかりませんでした。今でもわかりません。もう理解して覚えている人が、なにを家庭学習するのでしょう。そしてある日その家庭学習帳に何もしないで来てしまった日に、先生に頭を殴られました。あの意味のわからなさは忘れられません。


「かつて、または現在の日常生活の中(友人関係・家庭・仕事など)で、高IQであることで何らかの“生きづらさ”を感じたことはありますか?」という質問には

・生きづらさはあまり感じていない方だと思いますが、でも不愉快な思いをしたことはたくさんあります。
まず小学校一年生の時に、通知表に「有頂天になっている」と書かれてものすごくショックでした。理由はどうやら、休み時間などに他の子に勉強を教えていたからのようです。好きな友達に対して行っていることに対してそのような言葉を投げてくる先生がとても嫌でした。

・中学校でも先生で不快な思いをしました。家庭科や図工の授業で、例えば一人一枚絵を描きなさい、一枚服を作りなさいというときに、人の5倍くらいのスピードで終わってしまうのです。すると先生に「早すぎる」とかため息交じりに「早いわねえ…」と嫌味っぽく言われる。褒めてくれる先生より嫌味を言う先生の方が多かったように思います。これが自分の普通のスピードなのに否定されるようで、とても嫌でした。

・普通の事務作業の仕事に就くと(事務の派遣とか)、同じ仕事をしている人より早すぎて、奇特な目で見られるか、逆にこき使われるかします。

・家庭では母子家庭だったのですが、その母親からずっと「あんたは頭がいいことで調子に乗っている。人をバカにしている。」と言われ続けてきました。まったくそんな態度をしているつもりはありません。最近もつい口をすべらせて「知能検査受けてくる」と言ったら「そうやって頭がいいことを証明してもらって人を見下そうとしているのよ」と言われ心の底から悲しくなりました。(MENSAでキャッテル式テストを受けられるオフ会があったのです)
知能指数を測る=肌年齢を測るとかゲームをするくらいのノリと楽しさなのに、なんでそんなことを言われなきゃいけないのか。

・友人関係では生きづらさを感じたことはありません。常に「目上の人」が勝手に敵になってくる感じです。


…と回答しました。
ちなみに私の中学3年生の一斉知能検査後、元々テンションの高い担任の先生が廊下を
「お前、IQが150あるんだって!」と叫びながら走ってきたので、その数字は忘れられません。
(そんなことがあったので、じゃあ、とMENSAの試験も受けてみたのです。)
(でも今はそんな値は出ませんw もっと低いです)


ということで、「できる子」の世の中での居心地の悪さとか、理不尽な扱いとか、世の中に対するがっかりとか、実在するんです。
私は非常に運が良く友人に恵まれて、友人や先輩からいじめられたということは一切なかったのですが、そういうことも普通によくあることみたいですし。
アンケートに書いたように、私はその代わりに(?)先生とか目上の人から理不尽な言葉を受けてきました。
下にはみ出る子には支援級があるのに、上にはみ出たら褒められるどころか殴られるみたいなね。なんでしょうね。
中には伸ばそうとしてくれる大人もいましたが、めったにいませんでした。

「でも能力が高いなら、自分で適職もわかるだろうし、職場も簡単にみつけられるだろうし、自分で仕事も作れたりするんじゃないの? 何の苦労もないんじゃないの?」
という突っ込みが出ることもわかります。
そう思うことも理解できます。当然だとも思います。
できている人たちはもちろんいます。社会的に成功できている人々はいます。

でも、やっぱり発達に凹凸があったり(発達障害)、コミュニケーションがかみ合わなかったり、あと感じるのは自分も含め考えすぎるのか感じすぎるのかわからないけど鬱病などの精神疾患がやたらと多い印象です。
IQ高けりゃいいってもんじゃない、というのは幸田さんインタビュー1回目の記事でもしつこく書きました。
やっぱり能力の何かが飛び出るってことは、生きるための全体的なバランスとしては崩れがちな印象…。

で。そんな上にはみ出てかつ生きづらい「浮きこぼれ」の人を支援しようと動き出したのが、
以前インタビューをしたMENSAのお友達、幸田直樹さんです。

前回のインタビュー↓
bookand.hateblo.jp


ソフトバンクの元副社長などすごいメンバーとともに設立した団体は、その名も「高IQ者認定支援機構」。
直球です。

www.hiqa.or.jp


海外では、「できる人」の能力を資源として社会で有効に使おう、享受しよう、みたいな動きや、ギフテッドに対する教育もあるようですが
(すみません、勉強不足でどこの国が具体的に何をしているかというのは詳しく知りません…)
日本ではそういう支援は初なのかな、それか孫正義さんの天才を集めた育英財団は近いものがあるのかな。



「機構設立の目的と使命」にはこうあります。

「特別な適性を持つ人材」を発掘し、これらの人材が社会で活躍する道筋をつくることを目的として一般財団法人高IQ者認定支援機構を2019年4月1日に設立しました。

この目的の達成のため、以下の事業を行うことを定款に定めています。
 (1) 特別な適性を持つ人材の発掘及び育成(IQ検査〔CAMS〕による認定)
 (2) 企業・研究機関等における特別な適正を持つ人材の活用推進
 (3) これらを達成するための社会環境の整備
 (4) その他この法人の目的を達成するために必要な事業


とっても興味深いです!
もっと具体的に掘り下げて、かつわかりやすく理解するために幸田さんにインタビューをしました。

文字数が多くなりすぎたので、②にてインタビュー本文を掲載します! ↓↓
bookand.hateblo.jp



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幸田さん近影。歯医者…なぜ歯医者!?

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幸田さんちの美猫