絵本と愛と子どもらと

目指せ3000冊の絵本レビュー。おすすめの絵本を、季節や行事や年齢ごとに紹介します。時々子育てコラム。私のおススメはタイトルに★をつけています。

★273「ありこのおつかい」~物語も絵も飾らないラフさがいい。読めば読むほどに味わい深い魅力。

ありこのおつかい (日本傑作絵本シリーズ)

生き物特集。
とっても古い作品です。お話が(生き物たちが)入れ子になっています。
宇宙のような、生き物の摂理を描いたような、素敵な作品。

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「ありこのおつかい」表紙


「物語も絵も飾らないラフさがいい。読めば読むほどに味わい深い魅力。」

1968年という非常に古い作品。何とも言えない味わい深さがある作品です。
声に出して何度も何度も読みたい。
最初は「いきなり主人公が食べられちゃうなんて怖い」と思いましたが、読めば読むほどにどんどん惹かれていきます。

物語は入れ子構造になっていて、前半で入れ子が作られ、最後にそれがまた分解されてめでたしめでたし。

かぶをひっぱるおじいさん、それをひっぱるおばあさん、それをひっぱるこども…ならぬ
ありこを食べるかまきり、それを食べるむくどり、それを食べるやまねこ、それを食べる熊。

それぞれが食べられるに至った理由も、お腹の中の可愛い復讐で、「悪いことをしたら同じ目に遭うんだぞ」という教えが潜んでいて痛快です。

抽象画のようなイラストがまたなんともいえなく素敵です。
食べられるたびに大きくなっていく、マトリョーシカの断面のような絵。
入れ子になった動物たちのお腹の断面を現わしているかのような描写。子どもにわかるかなあ。私は大好きです。
全体的に空白を活かしたラフな水彩画で、物語を引き立てます。


2.情報

著者:石井 桃子
出版年月日:1968/12/15
出版社:福音館書店
ページ数:40ページ
おすすめ対象年齢:4~5歳から