海賊 (ポプラ社の絵本)
田島さんの怒りのエネルギーが、美しく繊細な絵本を通して刺さってきます。
「美しい人、美しい自然を破壊する人間と、失う海賊。美しさと悲しさと怒りと。静かに深く刺さります。」
ひたすらに美しく、悲しい本…。
でも根底には作者の田島さんの、強い怒りのエネルギーを感じます。
「「瀬戸内国際芸術祭2013」 の会場のひとつ、大島のハンセン病患者の方たちを強制収容してきた施設に展開された「青空水族館」。そちらの海賊と人魚が主役の絵本」とのことです。
細かくコマワリされているので、漫画のような雰囲気です。
細い線に、ベタ塗り。細い線はいつもの作風より繊細さを感じますし、それに重ねられたベタ塗りの色彩は、感情の色を細やかに表しています。幸せな時の色。悲しみの色。深いなあ。
でも心が特に揺れるところは、いつもの筆のタッチ。
海賊と人魚が踊っているところや、破壊するイノシシ、そして一番最後のシーン。
この使い分けが、ぐっときます。
美しい人、美しい自然を破壊する人間。
それと戦うけれど、愛する美しいものを失う海賊。
やり場のない悲しみは、吠えるしかない。飛んでいくしかない。せめてあの世か来世で幸せになってほしい。
そんな祈りと、怒りと。
深く深く刺さる作品です。