絵本と愛と子どもらと

目指せ3000冊の絵本レビュー。おすすめの絵本を、季節や行事や年齢ごとに紹介します。時々子育てコラム。私のおススメはタイトルに★をつけています。

★589「あかいはっぱのおくりもの」~死は怖いし悲しいけれど、次の世代にきちんとその生は引き継がれて、地球は回る。

あかいはっぱのおくりもの (スピカのおはなしえほん)

秋特集。
死について考える、感じる。いもとようこさんの作品の中でもかなり心に響いたやつ。

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「あかいはっぱのおくりもの」表紙


「死は怖いし悲しいけれど、次の世代にきちんとその生は引き継がれて、地球は回る。」

いもとようこさんの貼り絵を一番美しく感じた作品。
読んだ後も泣きそうな何かが残ります。ずっしり。それは引き継がれた命の重さか。
葉っぱは軽いが、その命はこんなにも重いのか。

今にも力尽きそうな木の先に揺れる赤い葉っぱ。
それを卵のおふとんにしようと持って行ったお母さん鳥。
赤い葉っぱは「頑張ろう」と生きる気力を取り戻します。

貼り絵(ちぎり絵?切り絵?)の紙のぎざぎざの質感が、葉っぱや羽のぎざぎざを美しく表現しています。
息をのむような美しさ。

頑張った末に命尽きどこまでも飛んで行った黒くなった葉っぱと、赤い葉っぱの命を引き継いだ子どもたち。
こうして世界の命やエネルギーは次の世代に引き継がれ、続いていく。
死は怖いし悲しいけれど、こうしてちゃんと前の生は魂に刻まれている。
そう思えば悲しくない(いや、でもちょっとまだ悲しいな…)。
命の循環を描く、美しく静かなお話。


2.情報

著者:西本 鶏介 (著), いもと ようこ (イラスト)
出版年月日:1988/8/1
出版社:教育画劇
ページ数:32ページ
おすすめ対象年齢:4~5歳から