絵本と愛と子どもらと

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420「コバンザメのぼうけん」~クジラの言う「せけん」とは何なのか、それぞれの考えが出たらきっと楽しい。魚も人間もいろいろ。

コバンザメのぼうけん (童心社の絵本)

非常に素敵なお話。灰谷健次郎さん大好き。村上康成さんも大好き。
…でも絵本にするのは違うかも…と感じてしまった。

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「コバンザメのぼうけん」表紙


「クジラの言う「せけん」とは何なのか、それぞれの考えが出たらきっと楽しい。魚も人間もいろいろ。」

灰谷健次郎さんの子どもを見つめる優しい眼差しが大好きです。
この本もコバンザメをはじめとした海の生き物たちを通して、人間に世の摂理と、それでも優しい「友達」の存在を教えてくれます。
クジラがコバンザメに「もっと世間を知らなくちゃ」と言ったのも、コバンザメのことが大好きで、コバンザメのことを思ってのこと。広い知見を持って、いつか広い世界に旅立てますようにという母のようです。
そう、灰谷さんはいつも母のような広い優しさを持っています。

クジラ、コバンザメ、タツノオトシゴ、タコ、トビウオ、マグロ、ウツボ、アンコウ、アオブダイ…様々な魚が登場し、それぞれが全く違う性質や考えを持ち、違う生き方をしていること、
そしてそれらが我々人間一人一人にあてはまることを思い知らされます。

クジラのいう「せけん」とは何なのか、自分なりに考えてみると楽しいです。哲学です。

でもこの本で残念なのが、「絵本にしなきゃいいのに!」という点。
灰谷健次郎さんも村上康成さんもそれぞれは大好きなのに、合体させようとしたら合体しなかったというか…。
それぞれ単体は素晴らしいのに、同時に頭に入れようとすると混乱。この文章は文章だけで楽しみたい。集中力が途切れてしまう。


2.情報

著者:灰谷 健次郎 (著), 村上 康成 (イラスト)
出版年月日:1996/7/10
出版社:童心社
ページ数:36ページ
おすすめ対象年齢:6~7歳から