かさ (ジョイフルえほん傑作集 10)
父の日特集。
字の無い絵本。なのにこんなに女の子の心情をたくさん語っている。
長く読み継ぎたい傑作。
「説明が何一つ無くても、視覚的な演出だけでこんなに多くを語れる。 これは芸術。」
字のない絵本です。一本の映画を観たかのような、身近だけれど壮大で美しい物語がこの中にあります。
雨の降る日に、小さな女の子が傘をさし、もう一本の傘を小脇に抱えて、傘を持たずに仕事に行ったお父さんを駅まで迎えに行きます。
女の子の傘だけが赤く彩色されていて、あとはモノクロ。
この赤は女の子の気持ちのようです。
鴨の親子を見る女の子と、池に映る赤い傘。ここにはほのぼのと優しい気持ちが。
突然犬がぶるぶるっとして、濡れないように慌てて傘で避ける。驚きの気持ち。
貨物列車の上の橋を渡る、小さな赤い傘。列車と線路は大きく、どこまでも続き、そこを大粒の雨が激しく降る。そんな中の小さなわたし。
ドーナツ屋さんを眺める赤い姿は、傘に顔が隠れているけれどきっと嬉しさと食べたい気持ちが顔に出ている。
大きな街並み(それでも昭和な街だからそんなに大きくもないけれど)と、対比される小さな赤。
ドーナツかケーキを買ってもらい、お父さんと相合傘で帰る女の子の傘はもう閉じている。
恋人に寄り添うように歩く姿は、安心して心をお父さんに委ねている。
説明が何一つ無くても、視覚的な演出だけでこんなに多くを語れる。
こういうことが芸術。
長く読み継ぎたい絵本。
2.情報
著者:太田 大八
出版年月日:2005/2/1
出版社:文研出版
ページ数:28ページ
おすすめ対象年齢:3歳から